簡単に流れを説明すると、こうなります。
原稿作成→印刷→原稿の表裏合わせ→転写準備完了
これだけです。
…とは言え、ただ作業をこなせば良い、と言うワケにもいきません。では、各作業のポイントや注意点など、以下に説明していきましょう。
・原稿作成
基本的に、印刷が左右逆でレジストになるので、欲しい形を素直に作図していきます。F式は、どちらかと言うと、大きいパーツよりも小さいパーツの製作を得意とする方式だと思います。
また、1回にかかるコストも安いので、一つの原稿にあまりあれこれ盛り込もうとせずに、例えばレーダーなら、1タイプを数基(大小にかかわらず、大体2〜3基と言った所)、爆雷投射機なら1回のエッチングで1〜2隻分くらいを賄える位に押さえて作図すると具合が良いです。種類と数を抑えるのは、均一な腐食と言う点でも有利だったりします。小さいパーツは、逆に、製作時に不足しないよう、余裕を見越して作図しましょう。この場合も、一つの版で、タイプを1〜2種程度に絞っておくこと。
原稿自体のサイズも、パーツのサイズ、スケールとの相談になると思いますが、表裏合わせて名刺サイズ〜最大でハガキ半分のサイズ位に押さえるようにすると良いでしょう。1/700スケールなら、大抵はこの面積で十分間に合うはずです。表裏合わせ時の目安となるトンボも一緒に作図すると便利です。
・印刷
印刷するときは、コントラストははっきりと、トナー濃度を濃い目に設定する事。機種により設定項目の違い(出来たり出来なかったり)があるので、テストを繰り返して最適の設定を見つける必要があります。とくにトナーが薄いと、金属板に上手く転写できなかったり、ベタ部分に転写のムラが出来て(=転写時のトナーのくっつきが悪い)、パーツ表面にアバタが出来たりしてしまいます。最も、これは機種ごとに傾向があるだろうから、様子を見て調節するように。これも経験がモノを言うところですね。
十分な裏づけは取れていませんが、メーカにより、ベタ部分の印刷にムラが出る事があります。トナーカートリッジを取り替えたばかり、と言う場合は気になりませんけど、消耗するにつれ、これは顕著に現れて来ます(私の使っているプリンタはムラになりやすいです)。例えば、戦車用のシェルツェンのような面積の大きいパーツや展示用の銘板のような、ベタの占める割合の大きいものを作りたい、と言った場合は注意が必要です。こう言うケースは、アウトラインのみを太めの線で作画し、転写後に残す部分をレジストペンやグランドで塗りつぶすようにすると良いでしょう(線は、面よりアバタにはなりにくいですが、やはり、トナーが少なくなると不安定になる事もあります)。多少のアバタはパーツ製作後の表面処理で何とかなるでしょうが、この点は頭に入れておきましょう。
・表裏合わせ
表と裏の一組を合わせてパターンを一致させます。F式ではこれが最も難しい工程で、と言うのも、厚めのファイン用紙を、印刷の裏側から、印刷物を光に透かして見ながら一致させないといけないからです。
いくつか方策はあると思いますが、現時点で一番良いと思われる方法は、ライトボックスを使う方法です。作るパーツのサイズにもよりますが、安いモデルなら、先に紹介したようなものが\4000もあれば買えてしまうので、ためらわずに導入した方が、結果としてはベストだと思います。ライトボックスが無い場合は、光にかざしながら行ってください。作業姿勢が不安定になりやすいので、かざす場合は厚手のアクリル板などに添えながら行うように。晴れの日に、窓を使ってやるのも効果的です。
原稿は、下図のような感じになります。
より完全な表裏合わせを期すなら、ただ折り曲げるのではなく、予め金属板か、同じ厚さの透明板を挟んだ状態で折り曲げたり、『パンツァーグラフ!』誌で紹介されたように、表裏別々にして、金属板を挟んだ状態で合わせるようにしましょう。まあ、0.1mmまでなら(場合によっては0.2mmでも)、折り曲げただけでも、きちんと合わせられていれば、ズレはかなり小さく押さえられます。
表裏合わせのさい、原稿を下図のように凸型にカットしておき、ライトボックスに広い方を固定しておくと作業が楽になります。
表裏合わせを完了して折り目をつけたら、ずれたりしないように、マスキングテープで折ったままの状態で固定してしまいましょう(下図参照)。マスキングテープを使えば、テープをはがす事なく、そのままアイロンをかけられます。
裏ワザ的に、作るパーツがさほど複雑で無いのなら、表裏どちらかを微妙(髪の毛1本ぶんくらい)に大きく作図しておいて、後からヤスリなどで正規の寸法に整える…と言う方法も有効です。
まあ、如何にハンドメイドとは言えど、出来る事なら、ズレは作りたくないもの。この方法も確実、とは言えないので、現在もベストな方法を探究中です。
アイロンを使って、紙に印刷したトナーを金属板に移しかえるのが、この工程のキモです。全体的に、表裏合わせほどシビアなテクニックは要求しませんが、作業は確実丁寧に。
・金属板のクリーニング、脱脂
転写の前に、金属板を綺麗にしておきましょう。表面の脂や表面の酸化膜をキレイに取り除かないと、転写は確実に失敗します。やり方は、水を付けて軽くペーパーで水研ぎするだけ。電子工作や美術用品では、金属板のクリーニング液がありますが、経験的に、ペーパーで綺麗にしたほうが手っ取り早いです。#400から始めて、最終的に#800〜#1000までかけておけばOKです。
金属は、人体に有害なものもあります。金属粉が出るので、作業時は手袋など使うと良いでしょう。素手でやるのなら、作業後はしっかりと石鹸水で手を洗って下さい。
ペーパーがけが終わったら、流水でしっかり洗っておきましょう。経験から、表面をしっかり流さないと、金属粉が残って、トナーの転写が阻害されるようです。流水だけでなく、その後、濡らしたティッシュペーパーなどで拭っておくと、より効果的です。流したら、水分、ゴミ等をしっかり払って乾かしておき、転写に備えます。
・転写
ラミネータに通して、トナーを金属板に貼り付けます。
転写の具体的なやり方ですが、これは使用する機種により色々と違いが生じるところだと思うので、事前にテストをしてもらって、自分のラミネータではどういう設定でどういう風にやれば良いかを把握しておいてください。私の使用機種では、温度は最大に設定しておいて、
0.1mm金属板なら4回くらい連続して通すとしっかりと転写が行えます。転写のさいには、原稿+金属板は、サイズに関わらず、2つ折にしたコピー用紙などに挟んでラミネータに通すようにして下さい。
・紙の除去
水を張った容器に、転写を終えた金属板を放り込みます。4〜5分くらい置いて、紙が水を吸ってクニャクニャになったら取り出し、そのまま紙を取り除きます。張り付いたトナーの形に紙繊維が残りますが、紙が充分に水を吸っていれば、指の腹でこすれば(強くこすらないように)、あらかた取り除けます。
ラミネータを使って転写した場合、繊維もファイン紙のコートの剥がれ残りが少なく抑えられます。多少残ったものは、消しゴムで軽く(あくまで軽く)こすると楽に除去できます。
紙の除去については、メーカにより、作業に多少の差が出てくると思います。水を吸わせても、なかなかキレイに取り除けないと言う場合は、ある程度はがしたら、またしばらく水につけておいて、またこすって…を繰り返しましょう。時間はかかりますが、こんなんでもキレイに取り除けます。腐食する部分の金属の地の色が曇りなく見えるようになったら、除去は完了です。 除去完了後は、水気を完全に取っておきましょう。金属板を色んな角度で光を当てて見て、レジスト部にうっすらと金属の地の色が透けている場合は、そこは、印刷時にトナーがムラになってしまった部分で、そのままエッチングすると、表面がアバタになる場合があります(カラーレーザーのトナーはムラになりやすいです)。そういう場合は、上からレジストペンやマジックなどを点描する要領で塗りつぶしてしまうと、アバタの発生を防げます。あとは外枠になる部分もマスキングテープ等で覆ってしまえば、腐食準備完了です。
ここまでの工程で、金属板にレジストを施した事になります。あとはそのまま腐食液に放り込むだけ… しかし何ですか、旧方式と比べて、やれ露光だ現像だといったメンドクサイ工程が無いので、えらい端折った工程ですな(笑)。「原稿作成」「印刷」「脱脂」「転写」「紙の除去」…ホントにこんだけ。自分で言うのもなんですが、F式のド単純さを改めて認識した次第です。
あとに控える作業は、と言うと、「腐食」「レジスト除去」だけだったりして。腐食はともかく、「レジスト除去」も旧方式と比べて、えらく単純な作業です。これらもよもや書くことあるんかいな、と言う感じなんだけど、やっぱ無いとしまりが無いので、と言うか書かなきゃダメだって(笑)。
…と言う事で、いよいよ最終工程へと進みます。
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